山に持っていく予定の行動食。
下山後に麓で買ったおやつ。
とてもおいしそうなのに
自宅で写真に収めようとすると
なんだかいまいち、なんて経験を
している方も多いのではないでしょうか?
四角友里さんもそのひとり。
これまではトレイにのせたり、
手ぬぐいや懐紙を敷いたりと
演出を頑張ってきたそうです。
そこで前回に引き続き、
写真家の加戸昭太郎さんから
食べものをおいしく撮る方法を教わります。
【Index】
第1回:
四角いものを歪ませずに写真に収める
***
まずは、友里さんが
用意してくださっていたおやつを
佐藤がパシャリ。
加戸:
「おやつを置きすぎちゃう?
ふたりとも食いしん坊やからって、
買ってきたもの全部写さんでええんやで」
佐藤:
(言葉を失う)
友里:
「……でも全部、食べるよね!?」(切実)
加戸:
「何を伝えたいか、にもよるけどね。
迷ったら、主役は何か、を考えるとええよ」
ふたりで話し合い、今回は、
大福が主役、三色団子が準主役、
にすることにしました。
加戸:
「今回も、光の入り方を気をつけたほうがええよ。
大切なのは、立体感を出すこと。
撮影者が太陽を背にする状態(順光)にすると、
のぺっとした印象になりがち。
カメラのレンズが、光の差し込む方に
向けられた状態(逆光)なら、
ふっくらとおいしそうに見えるよ〜」
だめな例(順光)
いい例(逆光)
佐藤:
「ほんとだ。
後に撮った方が圧倒的においしそうに見えます」
友里:
「陰影がついて、大福の質感が伝わってくるね!」
加戸:
「光が強くて影が出過ぎるときには、
白い画用紙や布を使うと
やわらかい印象になるで」
友里:
「ほんとだ。雑誌の撮影でカメラマンさんが
”レフ板”を使うときがあるけれど、
白い画用紙がその代わりになるんですね」
次に、画用紙の位置を被写体から
遠ざけたり、近づけたりしてみます。
近いとき
遠いとき
画用紙の位置が近いときには、
大福全体にやわらかい光が当たり、
遠いときには大福の手前が影になっています。
友里:
「ちょっとしたことで印象が変わりますね!
大福が喜んでる気がする♡」
加戸:
「さて、じゃあ
この山おやつをどの場所で撮りたい?」
友里:
「すこし背景も雰囲気を出したいです。
懐紙に描かれた緑の葉とリンクするように
部屋の観葉植物を入れ込んでみようかな」
山おやつの位置をずらして、
まずは友里さんがパシャリ。
加戸:
「うむ。いい感じになってきたやん」
ここまで習ってきたことを押さえるだけでも
充分、写真のクオリティが上がります。
ここからは、もう一歩、
詳しく知りたい方向けの内容です。
加戸:
「背景に脇役が写り込んでいるから、
カメラの設定を変えて
F値(絞り)を最小にしてみようか。
そうすると、主役たちが引き立つよ」
続いて、加戸さんが自分のカメラでパシャリ。
窓の外の光がやや強かったので、
レフ板を使います。
そしてできあがったのが、この一枚。
友里:
「なるほど。
もっと背景をぼかせばよかったのね!」
加戸:
「そう。F値を下げる(絞りを開放する)と
ピントの合う範囲が少なくなるから、
いい感じのぼけ感を出せるよ」
ここまで加戸さんに教わったことを踏まえて、
友里さんがパシャリ。
友里:
「私のカメラだとこれが限界かな。
三色団子が主役にするときは、
ピントの位置を変えれば良いですね!」
***
加戸:
「ところで友里ちゃん、
カメラのレンズ、何使ってるん?」
友里:
「23mm(*)の単焦点レンズ
(APS-Cセンサーサイズ)です」
*この数字は焦点距離のこと。
数が小さいと焦点距離が短く、画角が広くなり、
数が大きいと焦点距離が長く、画角が狭くなります。
*フルセンサーサイズ(35mm判)に
換算すると、35mm相当です。
加戸:
「なるほど、広角(ワイド)レンズやね。
そのレンズで被写体に寄ると、
極端にいえば、魚眼レンズのように周囲が伸びて、
中心物は丸く歪んでしまう特性があるんよ」
友里:
「⁉︎」
加戸:
「形を歪ませたくないときや
背景をぼかしたいときは、
被写体からなるべく離れた位置に立って、
ズームレンズで寄って撮るとええよ」
友里:
「このカメラ、
昨秋、買ったばっかりなんです……(涙)」
加戸:
「いや、本体はそのままで大丈夫。
撮りたいものの状況に応じて
レンズを付け替えれるよう、
ズームレンズか中望遠レンズなどを買い足してもいいかもね!」
友里:
「そっか!ほしくなっちゃうなぁ。
これをいわゆるレンズ沼っていうんですかね?(笑)」
せっかくならもっとカメラを楽しみたいと、
早速レンズの情報をスマホでチェックする友里さん。
***
佐藤:
「でも加戸さん、いつも撮影で
広角レンズを持ってますよね。
どんなときに使ってるんですか?」
加戸:
「星空とかを撮るときやね。
15mm(フルサイズセンサー)とか
しっかりした広角レンズで撮って、
端の歪んでしまう部分は、
時には画像処理で調整するねん」
友里&佐藤:
「へえーーー!」
(一例として、
加戸さんがワイドレンズで撮影した後、
画像処理した写真をお借りしました)
***
友里:
「……先生っ!!
山おやつといっしょに飲むコーヒーも
おいしそうに撮りたいです。
湯気がふわ〜っていう感じ」
加戸:
「そんなに難しくないよ。
コツは背景が暗い場所で撮ることやね」
佐藤:
「わあ、きれい!
山小屋のうす暗い場所なら、
自分でも湯気の写真を撮れることがあったけど、
そういう理論だったんですね」
友里:
「どんどんおもしろくなってくるね!」
***
次回は加戸さんから、
山バッチをいい雰囲気に撮る方法を教わります。
【Index】
第1回:
四角いものを歪ませずに写真に収める