Go hiking with KUKKA

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はじめての八ヶ岳・赤岳へ。雪山登山してきました!|KUKKA佐藤の山エッセイ 2021年の初め、赤岳鉱泉を拠点に山岳ガイドさんにお願いし、文三郎尾根から赤岳山頂を目指した記録です。岩と氷がミックスした斜面をアイゼンで歩くことに苦手意識がある佐藤でも、憧れ“厳冬期の赤岳”を登ることはできるのか?

はじめての八ヶ岳・赤岳へ。雪山登山してきました!|KUKKA佐藤の山エッセイ

今年の初め、「バーチャルアイスキャンディフェスティバル」の動画撮影のため、1泊2日で赤岳鉱泉へ行ってきました。
初日はお昼前に鉱泉に到着し、人工氷瀑・アイスキャンディで初めてのアイスクライミングに挑戦したのですが、2日目は、山岳ガイドの笹倉孝昭さんとマムートの宇津木正太さん、わたしの3人の予定がぽっかり空くことが判明。

宇津木さんの発案で、朝から赤岳に登ることになりました。

私は岩と氷がミックスした斜面をアイゼンで歩くことに苦手意識があり、以前におなじ山域の硫黄岳や天狗岳に登ったときでさえ、おっかなびっくりだったので、自信がないことを正直にお伝えしたら、笹倉さんからあっさり「まあ大丈夫ですよ」のひとこと。

当初は美濃戸口と赤岳鉱泉を往復するだけの予定だったので、足回りの装備はチェーンスパイクしか持っておらず、(アイスクライミング用のアイゼンは鉱泉でレンタル)歩行用のアイゼンもお借りして、臨むことにしました。

それでも、山友達でモデルの仲川希良ちゃんが初めての雪山で赤岳に登った話を聞いた衝撃が頭に残っていたこともあって不安を拭えず、
いつも鉱泉では夜にマムートロゴ入りグラスでワインをいただくことを楽しみにしているのですが、控えめにしてたくさんストレッチし、体力温存につとめました。翌朝は6:30に朝ごはん。7:30に出発できるように、そそくさと準備をしていたのに、玄関で靴を履くタイミングになってハプニング発覚!

靴のミッドソールがぱっかり割れていたんです。

前日アイスキャンディが終わって靴を脱ぐときには、気が抜けてよく見てなかったのですが、おそらく途中で亀裂が入ったのだと思います。急きょ、シューズもレンタルして、出発することに。

そして歩き出してすぐ、さらなるハプニング。お借りした靴は前のコバが浅くて、ワンタッチ式アイゼンがしっかり噛み合わず、ちょっとした衝撃で外れてしまうことがわかりました。
初っ端から足を引っ張るのも申し訳なく、お二人で山頂を目指していただくのがよいのではと思ったのですが、笹倉さんはとても冷静。

アイゼンと靴の間に隙間が空いていることが原因だからと、ファーストエイドキットからバンドエイドを出し、小包装の紙を巻きつけるようにして、隙き間を埋めてくださりました。
とはいえ、不安定な状態であることに変わりはないので、なるべく前爪に衝撃を与えないよう、足を真上に上げて、地面には足裏全体でつくフラットフィッティングという歩き方を心がけました。

そんな緊張感のあるスタートでしたが、八ヶ岳ブルーの空に浮かぶ下弦の月も、たっぷりと雪をかぶったしらびその森も、うっとりする美しさ。静まりかえったなかを、笹倉さんの足運びに合わせて、ザクザクとアイゼンの音を響かせながら、登山道を進みます。

朝出発してから約1時間。行者小屋を越え、文三郎尾根へ。中岳・阿弥陀岳への分岐地点でひと休みしました。
このとき、ヘルメットをバックパックから落とし、行動食を出すのにもたつくなど、パッキングがうまくできていなかったことを反省。

左手には赤岳のバリエーションルートを望めます。
大同心に小同心、石尊峰。山岳信仰にゆかりのある名前の岩に、集中して歩くことを心の中で誓って気を取り直しました。

少し登ると長い階段が始まり、ロープをつないでもらって再出発。
登り道が急になるので、ダックウォーク(アヒルのようにつま先を開く)とスリーオクロック(つま先を90度に開く)、クロスステップの歩き方を教わりながら、足真似をしながら歩きます。

笹倉さんの方針は、休憩はとらず、ゆっくりスピードで歩き続けること。斜面が急な場所から緩やかになっても速足にはならないので、そこで呼吸を整えました。
一定のリズムを刻み続ける笹倉さんと宇津木さんの足音に、すこし愉快な気持ちになったり、左右にそびえる阿弥陀岳や横岳の美しい山並みに惚れ惚れしたりと、すこしだけ心に余裕をもてている自分を発見したり。

でもそんな時間は束の間で、標高が上がるにつれて風が強くなり、ついに苦手な岩と雪と氷のミックスゾーンが現れます。
笹倉さんの足の置き場とリズムを眺めながら、一歩ずつ。プロでも一度置いた足を微調整して次に進んでいるのだから、わたしも落ち着いて試行錯誤して進もう。そう思って、心を落ち着けました。

アイスキャンディチャレンジに備えて、岩登りの練習を2回させてもらったのですが、そこで得た感覚もすこし生かせたような気がします。以前、硫黄岳に登ったときは怖くて進めず、立ちすくんでしまったこともあったのに、何度も手をついてしまいましたがアイゼンに体重を乗せることに集中できました。

そして登頂!嬉しい!!!

「11時を引き返すタイムリミットにしていましたが、あと3分です。写真を撮ってすぐ下山しましょう」と笹倉さん。
振り返ると雲海からちょこっと富士山が頭をのぞかせていました。岩場は下りの方が怖そうだと思っていましたが、頂上に着くころには風が穏やかになっていたので、不安な場所は手をつきながら落ち着いて進むことができました。

じつは登りの途中で、左足のアイゼンがどう工夫しても外れるようになり、そこからは下山も、片足だけつぼ足だったので、緊張感があったのですが……

お昼は赤岳鉱泉でカレー、下山後は美濃戸登山口のJ&Nさんで美味しいスイーツを食べることを次の目標にして、集中力を切らさないようにしました笑。
お天気に恵まれたこともありますが、ガイドさんにお願いし、山小屋に泊まったからこそ、“厳冬期の赤岳”という一生、縁がないと思っていた憧れの景色を自分の目で眺めることができ、しみじみ感謝しています。

マムート宇津木さんと新宿店のスタッフさんからアドバイスをいただいてウエアを新調したおかげで、寒さにおびえることなく、のびのび楽しめたこともよかったです。

欲が出てきたわたしは、これから先、どう練習したらいいのか笹倉さんに相談したところ、いつもの山で15kgぐらいの重いバックパックを背負って、足のつき方を意識したり、ガイドさんにお願いしておなじ赤岳でも地蔵尾根や別のルートを歩いたりするのもいいよ、とのこと。

ゆるゆるとこれまでと同じペースの山歩きを楽しみつつ、冬靴を買い替えて少しずつでもまだ見ぬ景色に近づいていけたらいいなと思ってます。

赤岳鉱泉の皆さん、マムート・スポーツグループジャパンさん、山岳ガイド笹倉さん、ありがとうございました!

登頂をコンパクトにまとめた動画もありますので、よろしければご覧ください!>>>